- AIの登場で同じ市場機会を狙う企業が増え、Go-to-Market(GTM)の質が戦略的に重要になった。Vercel・Stripeでセールス組織を0から構築したジーン・グロッサーが、世界レベルのGTM組織の本質を語る。
- 企業買収の80%は『新しい可能性』ではなく『リスク回避』の動機であり、顧客体験そのものが差別化要因になりうる時代。営業担当者が『営業』に見えないほど、エンジニアマインドを持つことが重要だ。
- AIエージェントの内製化で採用コストを90%以上削減し、セールス効率を10倍化させた実例。PLG vs営業体制の議論や、営業組織へのダイバースな背景人材の混合戦略など、実践的なTipsが豊富。
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AI時代のGTMが重要になった理由:差別化が『製品』から『買い手体験』へシフト
AIツールの普及により、同じ市場機会を追う企業が増加している。その結果、製品そのものの差別化が難しくなり、『Go-to-Market』の質が以前以上に戦略的な重要性を持つようになった。特に顧客購買の80%は『リスク回避』『痛みの軽減』といった保守的な動機に基づくことを認識することが重要。スタートアップ創業者は『未来に何ができるか』という夢の話を好むが、企業購買部門は『来期の売上目標を達成できるか』という現実的なリスクにこそ関心がある。つまり、顧客が感じる売込みプロセスそのものの体験が、製品の微細な差異よりも購買決定に大きく影響するようになってきているのだ。
エンジニアに見えるセールスチーム:営業を『営業』に見えなくする組織文化
ジーン自身が大事にしている指標は『10人のエンジニアの前に出した営業が、10分で営業だと見破られないか』というもの。つまり、営業担当者自身がプロダクト知識を深く理解し、顧客の技術的文脈を語れるレベルまで達していることが求められる。これは単なるスキル向上ではなく、文化的な仕組みだ。営業組織が技術的な説得力を持つことで、エンジニア主導の購買環境でも信頼が生まれやすくなる。特にB2B SaaSの顧客評価プロセスでは技術者の同意が必須であり、営業が『営業っぽい』ままでは信頼を失うリスクが高い。
AIエージェント内製化による劇的なコスト削減と効率化:SDR機能の再発明
Vercelではリード獲得エージェントを6週間で内製化し、SDR 10名の採用コスト(年間100万ドル以上)を、エージェント年間運用費1,000ドルに圧縮した。つまり90%以上のコスト削減だ。さらに興味深いのは『ディール・ボット』の例で、これは2日間(40時間)で開発完了し、顧客からの問い合わせの背景にあるニーズを自動で分析し、改善アクションを提案する仕組みになっている。航空会社の例では、顧客サポート通話を自動分析し『なぜ今週、人々は電話をかけてきたのか』『来週の通話を減らすには何ができるか』という予防的な洞察を引き出している。ただし注意点として、既存の市販ツールでは組織固有のコンテキスト・ワークフローが反映されにくく、内製化で初めて本当の価値が引き出せる場合が多いということ。
セールス組織の人材多様化戦略と学習文化:営業経験者とコンサルティング・銀行業出身者の相乗効果
『営業は学べるスキル』という前提に立ったうえで、ジーンは営業経験者と、コンサルティング・銀行業出身の非伝統的背景を持つ人材を意図的に混合させている。営業経験者は『営業スキル』を教え、コンサルタント・銀行家出身者は『定量分析』『P&Lの読み方』『TCO分析の提示法』『CFO との対話スキル』をもたらす。この混合によって相互学習が起こり、営業チーム全体の質が上がる。また、PLG(Product-Led Growth)vs従来営業体制の二者択一ではなく、市場特性に応じた使い分けが重要。さらにセールスコンペや報酬体系も『個人の短期的な成果』よりも『チームの予測可能性』『長期的な顧客成功』を重視する設計に変える動きが見え始めている。