- Circle の創業者 Jeremy Allaire が、ブロックチェーンとステーブルコインが AI エージェント経済の基盤になる理由を語る回。
- 単なる決済やスペキュレーションの道具ではなく、マシン同士が経済活動を調整・実行するための『経済用 OS』としてのブロックチェーンの役割に焦点を当てている。
- 金融システムの民主化から社会契約の再交渉まで、技術がもたらす経済・政治的な大転換を見据えた壮大なビジョンが提示される。
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ドル基軸のステーブルコイン設計が重要な理由
Circle の創業哲学は、ビットコインのような政府からの独立を目指すのではなく、『インターネット上のドル・プロトコル』を作ることにあった。Allaire は、2008 年の金融危機後の各種ベイルアウトに対する懸念から、フルリザーブ・マネー(完全準備金制度)の概念に惹かれ、安全でアクセス可能な金融システムの構築を目指した。ステーブルコインは、ドルという既知の価値基準を持つことで、エージェント経済が機能するための共通言語・決済基盤を提供する。
AI エージェント経済における『プログラム可能な金銭』の役割
Allaire の初期ビジョンは、ブロックチェーンがマシン(自律ソフトウェア・エージェント)による経済活動の仲介を可能にするオペレーティング・システムになるというものだった。これまで「e-コマース」や「決済」と誤解されやすいが、本来のエージェント経済活動とは、労働と資本の組織化がどのように再構成されるか、機械計算がいかに経済活動を駆動するかについての問題である。ブロックチェーンは、複数の AI エージェント(異なるモデルや LLM から生成される可能性あり)が信頼できる共通の場で価値を保有し、契約を実行し、リアルタイムで数学的・計算的に証明可能な形で相互作用できるインフラを提供する。
オンチェーン組織と新しい企業形態の出現
Allaire の見立てでは、これまで『企業』『組織』と呼んできたものの実体が、ソフトウェア・マシン自体になり得るという大転換が起きつつある。ARC(Circle が開発中のプロトコル)は、価値の保有・移動、企業形態の実装、複雑な契約の仲介といった経済活動の構成要素全てを層状に実行できる『経済用 OS』として設計されている。オンチェーンで異なるガバナンス形態やテンプール(ハイブリッド)な人間とエージェントの混合組織が大量に出現する見込みで、それらが経済史上最も生産性の高い企業形態になる可能性もある。
AI 時代の GDP 成長と社会契約の再交渉
Allaire は 2030 年代に二桁の GDP 成長が実現する可能性は高いと見ている。ただし、インターネットなどの過去の技術革新が GDP に与えた影響の測定が難しかったように、AI の経済効果も測定や分配の問題を伴う。より大きな懸念は、GDP 成長が資本集約度を高め、人間側の経済的利益を相対的に減少させるリスクである。技術者としてのスタンスでは前向きな予測をしているが、そうした恩恵を広く社会で共有するには、新しい社会契約(政治・経済ガバナンスのあり方)を同時進行で構築する必要がある。